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第14章

「ご飯はいいわ、用事があるから、また今度誘ってね」

鈴木千穂は渡辺雄二と仲が良かったので、断る時でも笑顔を絶やさず、彼の面子を潰さなかった。

渡辺雄二は鈴木千穂が高級ブランドの特注ジュエリーボックスを手に持っていることに気づいた。本当に用事があるようで、言い訳ではなさそうだった。

彼が返事をしようとしたが、鈴木千穂はすでに江口慎吾の横を通り過ぎ、そのまま立ち去ってしまった。

終始まっすぐ前を見て、一度も横目で見ることさえしなかった!

急に周囲の空気が重くなり、渡辺雄二は江口慎吾の表情をこっそり窺い、ぎこちなく取り繕った。

「あの...慎吾、千穂さんは多分気づかなかっ...