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第2章 良心がない、これはあなたの妹です

林田由紀子は一瞬固まり、すぐに駆け寄って、親しげに川島凛の腕を掴んだ。

「お姉さん、私、拓也お兄ちゃんのことが好きなの知ってるでしょ?でも、私と拓也お兄ちゃんが両想いだってことも分かってるはずなのに...どうか私たちを引き離さないで!昨日、拓也お兄ちゃんに何を言ったの?今日は私のこと無視してるのよ...」

川島凛は眉をひそめ、林田由紀子に掴まれた手首を冷たい目で見つめ、軽く力を入れるだけで振り払った。

「言われなければ忘れるところだったわ。昨日、カッパみたいなのがLINEを聞いてきたけど、醜かったから教えなかったの。あなたの恋人だったのね」

「……」

「川島凛!何言ってるの?」

川島凛は少しの憐れみも見せずに彼女を見つめた。

あの歪んだ顔立ちの、油ぎった大げさな男に、林田由紀子が何を見出しているのか理解できなかった。

水原拓也のスマホに保存されている「ベイビー」や「ハニー」や「カワイコちゃん」たちを一列に並べたら、林田由紀子の目の前で女子サッカーの試合が繰り広げられるだろう。

顔立ちもほとんど同じタイプで、林田由紀子と同じシリーズの顔。知らない人が見たら、彼がコレクションでもしているのかと思うほどだ。

こんなクズ男を、林田由紀子だけが宝物のように扱っている。自業自得で白粥でも飲んでいればいい。

林田由紀子は川島凛のその視線を見て、自尊心が痛烈に傷ついた。

なぜ?!

今や自分こそが林田家の正真正銘のお嬢様なのに!

川島凛のような偽物が、どうしてまだそんな目で自分を見るのか?

林田由紀子の目に濃い嫉妬の色が浮かび、彼女たちに向かって歩いてくる金子紗良を見つけると、足元で一つ動きを取り、そのまま倒れ込んだ。

「あっ!お姉さん、どうして私を押したの!」

「……」

金子紗良は可愛い我が子が川島凛に押されて地面に座り込んでいるのを見て、急いで駆け寄り、心配そうに林田由紀子を抱き起こした。

川島凛は金子紗良の腕の中で泣き続ける林田由紀子を見つめ、四両を千貫に動かす一言を放った。

「芝居はやめなさい。あなたたち二人は相変わらず母慈子孝ね」

金子紗良は一瞬固まった。「それはどういう意味?以前私が由紀子を贔屓していたことを責めているの?」

川島凛は手を叩いて、冷淡に言った。「責めてなんかいないわ。私はあなたを見下しているだけ。私の言葉が理解できないのは当然よ。結局、私はあなたが産んだ子じゃないんだから。知能というものは、あなたには備わっていないでしょうから」

「……」

「待ちなさい!毎日何をいったい企んでいるの!」

林田由紀子の目に得意げな色が浮かび、急いで怒りに燃える金子紗良をなだめた。

「お母さん、怒らないで。お姉さんは家に戻ってきてからどれだけ辛い思いをしているか分かってないのよ。私、お姉さんのこと心配してるの。山間部の女の子たちは皆、家の兄たちのために嫁入りして結納金を稼がなきゃいけないって聞いたわ」

彼女がそう言うと、長年彼女を育ててきた家政婦がすかさず口を挟んだ。

「お嬢様のおっしゃる通りです。川島凛さんのような気性では、嫁げるとしても嫁を娶れないようなやもめのジジにしか嫁げないでしょう。あの口の利き方では、嫁いだ先で叩かれるに決まっています!」

「お嬢様は本当に優しいですね、川島凛さんのことまで心配されて」

「お嬢様は小さい頃から川島凛さんより努力なさっていました」

……

これらの声は林田由紀子の耳に心地よく響いた。

彼女は口元を上げたが、川島凛がまだ淡々と微笑んでいるのを見て、まるで彼女たちを相手にする気がないかのようだった。

川島凛がまだ笑っていられるなんて?

きっと演技に違いない!

怒りに任せた金子紗良は、川島凛が手に持っていたノートパソコンを奪い取った。

「ここまで大きくなったのは誰のおかげだと思ってるの?今日は裸で追い出されても、私の言うことを聞かなければならないわよ!」

林田由紀子は目を見開いた。

金子紗良の行動に大いに期待を寄せていた。

わぁ!これはスリリングすぎる!

林田景が慌てて駆けつけ、パソコンを取り上げて川島凛の腕に押し込んだ。

結局のところ、川島凛と自分は親子の間柄だ。

もしこんな大ごとになれば、この界隈でやっていけなくなるかもしれない。

林田景は見栄っ張りで、そんな恥をかくわけにはいかなかった。

「凛ちゃん、出て行く前に何か欲しいものはある?うちは大きな家だから、与えられないものはないよ」

家政婦はまだしつこく、火に油を注いだ。

「私は川島凛さんを見るたびに、背筋が寒くなるんです……」

「やっぱり辺鄙な田舎から来ただけあって、何か怪しげな手段を知っているのではないでしょうか?」

「何も持って行かせるべきではないと思います。家の中に監視カメラを設置するような女の子、考えてみれば本当に恐ろしい!」

……

川島凛はそれらの言葉を無視し、自分のものをすべて丁寧に片付けた。

透き通るような瞳を上げ、目の前の金子紗良と林田由紀子をじっと見つめた。

彼女は軽く微笑んだ。「あなたたち母娘、そっくりなのに、これだけ長い間気づかなかったの?カッパと婚約することになって、やっと焦り始めたの?落ち着かなくなった?本当にありがとう、こうしてくれなかったら、私が婚約を解消する方法を考えなきゃならなかったから、面倒だったわ」

子供の頃から、川島凛が何をしても、金子紗良は林田由紀子を贔屓していた。

彼女に勉強はそれほど良くなくても大丈夫だと言い聞かせていた。どうせ林田家は成績で食べていくわけではないから、と。後になって分かったのは、その時期に林田由紀子が彼女の成績を妬んで、金子紗良に泣きついていたからだった。

テストで高得点を取ると、金子紗良に叱られた。林田由紀子の気持ちを考えていないと言われた。

いわゆる「家政婦」の娘が、金子紗良の目には川島凛という実の娘よりも大切だった。

それが何を意味するのか、後ろめたいことをした金子紗良は、自分でよく分かっているはずだ。

川島凛は口元を上げ、林田景を見た。

「何も要りません。ですが、お返しに、林田さんと奥さんに『贈り物』を用意しておきました。気に入っていただければ幸いです。私が出て行った後に届くでしょう」

この言葉は冷たく、林田家との縁を切る意思を明確にしていた。林田家と関わりを持つ気は全くなかった。

林田景の表情は少し崩れた。

金子紗良は彼女の言葉を聞いて、川島凛がもう出て行くというのに、まだ自分を脅していると感じた。

彼女は怒りに燃え、林田由紀子の見せかけの制止を無視して、川島凛に平手打ちを食らわせようと突進した。

「あなたのような人間が水原家との婚約を解消するなんて言えるの?言っておくけど、出て行ったら二度と戻ってこないで。田舎で鶏の世話をして泣きたくなっても、私たちはもうあなたを認めないわよ!」

金子紗良は川島凛の手にある箱を奪おうとし、振り上げた手がまだ落ちる前に、川島凛は身をかわした。

後ろの人も引き止める間もなく、金子紗良は壁に頭をぶつけ、その場で大きな腫れが現れた!

金子紗良は大きな悲鳴を上げた。「あなた、私を押したの?!」

林田由紀子は驚いて、急いで金子紗良を支えに行った。

川島凛はその場に立ち、氷のように冷たい表情で言った。「私はまだあなたを平手打ちしてないわ」

彼女の目には、金子紗良も林田由紀子も、ただの小物に過ぎなかった。

この視線を見た金子紗良は少し心もとなくなり、上げていた手をついに下ろせなかった。

事を収めようとする林田景も丸く収めようとした。「こんなに大騒ぎして何になる?みんなで川島凛を見送ろう、もしかしたら最後の対面かもしれないんだから……」

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