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第7章

「コホッ、コホッ……」

小林絵里はタバコの匂いで目を覚ました。

ソファから起き上がった途端、かろうじて体を隠していた服が滑り落ちてしまった。

彼女は小さく悲鳴を上げ、慌てて服を掴んで身につけた。

「目が覚めたか?」

坂田和也の感情のこもっていない声が響いた。

小林絵里が声のする方を見ると、オフィスデスクの後ろで煙を吐き出している坂田和也の姿があった。

彼女の乱れた様子とは対照的に、彼は服装も整っており、髪型も以前と同じく一切の乱れもなかった。

小林絵里は指を強く握りしめ、慌ててボタンを留めた。

「人間性がない」

先ほどの激しさを思い出し、彼女は小さく呟いた。

こんな状態にしておきながら、後始末さえ手伝おうともしない。

気のせいかもしれないが、煙の向こうで坂田和也が少し笑ったように見えた。

ただ、その笑顔はあまりにも一瞬で、彼女には捉えきれなかった。

彼女は少し痛む足で坂田和也の前まで歩み、そのまま彼の膝の上に座った。

最後の望みを胸に、おずおずと尋ねる。「和也、私たち、離婚しないよね?」

坂田和也は反射的に彼女の腰を支え、落ちないようにした。

しかし意地悪く小林絵里に向かって煙の輪を吐きかけた。

「私が女に困ってると思うのか?」

小林絵里の表情が一変し、震えながら彼の膝から立ち上がった。

目の前の男がそんな言葉を口にするなんて、信じられないといった様子だった。

坂田和也は彼女を見ることもなく、腕時計を見た。「2時だ」

午後の勤務時間が始まる頃だ。

小林絵里は怒りで全身を震わせ、唇を強く噛みしめた。最後に坂田和也の冷たい視線の中、背を向けて去っていった。

坂田和也は彼女の細い背中を見つめ、椅子に寄りかかって疲れたように目を閉じ、眉間を指で押さえた。

しばらくして、彼は携帯を手に取り、画面を何気なくタップした。

すぐに部長はメッセージを受け取った。

……

小林絵里がオフィスに戻ると、全員が手を止め、彼女を面白そうに、あるいは他人の不幸を喜ぶような目で見つめていた。

坂田社長が就任初日に、この女がはっきりと彼を誘惑しようとしたのだ。

今は仕事で責められ、こんなに長い時間戻らず、戻ってきた表情もこんなに暗い。きっと坂田社長にひどく叱られたに違いない。

皆はまた小声で噂し始め、ほとんどが彼女が解雇されるかどうかを推測していた。

小林絵里は聞こえないふり、見えないふりをして、そのままデスクに戻って座った。

彼女は本当に坂田和也に疲れ果てていた。

隣の仲の良い同僚が寄ってきて心配そうに言った。「絵里、大丈夫?坂田社長に怒られたの?クビにならない?」

小林絵里は一瞬考え込み、先ほどの坂田和也の表情を思い出して、不確かに答えた。「たぶん大丈夫じゃないかな」

仕事上でミスをしたわけでもないし。

もし離婚のことで坂田和也に仕事を奪われるなら、あの男はあまりにも酷すぎる。

同僚はほっとため息をつき、少し憤慨した様子で言った。「さっきみんなで賭けてたんだよ。絵里が左足からオフィスに入ったからクビになるって。本当に彼らと大喧嘩したかった!」

小林絵里は感動して彼女を見つめた。

同僚はちょっと間を置いて、心配そうに忠告した。「絵里、坂田社長は私たちみたいな一般人が憧れるような人じゃないわ。次からこういうことしないで、みんなから狙われないようにね」

小林絵里はプッと笑い、唇の端に小さなえくぼが浮かんだ。

「わかった、誘惑するつもりなんてなかったのよ」

それに、さっきだって彼が無理やり彼女を……

同僚は疑うことなく安心し、自分の席に戻って仕事を続けた。

結局、絵里は彼女が見た中で一番美しい人だったし、そんな目の保養になる同僚がいなくなるなんて考えたくもなかった。

午後の時間はあっという間に過ぎた。

退社時間が近づくと、部長が再びアヒルのような足取りでオフィスに入ってきた。

目ざとい同僚たちがひそひそと話し始めた。

「部長が書類を持ってる、絶対解雇通知だよ!ほらね、小林絵里はクビになるって言ったでしょ!」

皆の小さなささやきの中、部長は小林絵里の側に歩み寄り、書類を彼女のデスクに投げた。

「小林絵里、坂田社長から直接の指示だ。このプロジェクト、君が担当することになった」

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