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第51章

「絵里、もう少し寝ろう」

背後から自然で親密な声が聞こえ、男性の顎が彼女の頭のてっぺんに擦り寄せられた。

小林絵里は固まった。

これは以前の二人の触れ合い方だった。

朝、彼女が早く起きたとき、和也はいつもこうだった。優しくて甘えん坊で、こんな風に話しかけてくれた。

小林絵里はぼんやりとベッドに横たわり、一瞬過去と現在の区別がつかなくなった。

どうして区別がつくだろうか?

過去も現在も、この言葉を口にする人物は和也なのだから。

胸が酸っぱく苦しいのに、彼女は自分の指を噛んで、起き上がろうとはしなかった。

この抱擁にまだ未練があった。

彼の体温、彼の匂い、彼のすべてに。

時...