




第6章 お見合いの手配
病院。
佐藤絵里が病室のドアを開けると、鈴木瑛子は彼女を見るなり、にこやかに微笑んだ。「絵里ちゃんね、来てくれたのね。お婆さんがずっとあなたのこと話してたのよ。早く来て、会わせてあげて」
佐藤絵里は彼女を無視し、病床の横にしゃがみ込んだ。「おばあちゃん、少しは良くなった?お医者さんが言ってたよ、ちゃんと休んで、薬を飲んで検査を受ければ、回復は問題ないって」
お婆さんは彼女の声を聞くと、弱々しく目を開け、口を動かしたが、声が出なかった。手を少し上げかけたが、また力なく落ちた。
佐藤絵里はしっかりとその手を握りしめた。「ここにいるよ、ここにいる。私は元気だから」
「絵里……」
鈴木瑛子はお婆さんを支え起こした。「お婆さん、絵里ちゃんはとても頑張り屋さんよ。少し休んでください。私、彼女と少し話があるの。艾婕、おばあちゃんの相手をしてあげて」
佐藤愛子はスマホを手にして、ちらりと目を上げた。「ああ」
彼女は鈴木瑛子が連れてきた娘で、颜という姓だが、佐藤絵里とは血縁関係がまったくなかった。
佐藤絵里は病室のドア口に立ち、鈴木瑛子を見た。「何の用?」
「どこから六十万円を手に入れて、費用を全部払ったの?」
「あなたには関係ないでしょ」
鈴木瑛子は笑った。「心配してるだけよ。あなたならそんな力があると思ってたわ。若くて綺麗なんだもの、それがあなたの一番の資本よ。これからいい暮らしができるわね」
「要件だけ言ってもらえる?」
この継母は、かつて佐藤家が栄えていた頃、佐藤絵里に対して嫌がらせをしたり、あらゆる良いものを佐藤愛子に与えたりしていた。
今、問題が起きても、内緒のお金を一銭も出さず、彼女に体を売れとまで言い出した……
お父さんがどうしてこんな女性に心を奪われたのか、本当に理解できなかった。
鈴木瑛子は神秘的な口調で言った。「うちの家庭の状況は、あなたも知ってるでしょ。この二日間、いろんなコネを使って、あなたのためにお金持ちでいい人の富豪を見つけたのよ。あなたと結婚したがってるわ、ちゃんとした奥さんにしてくれるって」
「へぇ」と佐藤絵里は尋ねた。「そんないい話、どうして佐藤愛子に行かせないの?」
「あなたのことを考えてるのよ。どちらも娘なんだから、等しく大事にしてるわ」
佐藤絵里はすぐに拒否した。「行かないわ」
鈴木瑛子の顔色がその場で変わった。「行かないなんて、佐藤家はどうするの?あなたのお父さんはどうするの?会社は?家族の生活費は?」
ちょうどそのとき、佐藤父が近づいてきた。鈴木瑛子はすぐに向きを変え、泣き言を言い始めた。「継母って本当に難しいわ。一生懸命彼女のために走り回って頼んで、いい行き先を見つけたのに、全然感謝してくれないのよ……」
「絵里ちゃんにお見合いをセットしたのか?」
「そうよ、相手は結婚前提で、うちの状況も気にしないって言ってくれてるのよ。ねえ、提灯持って探しても見つからないような話でしょ?」
佐藤父は顔を上げ、佐藤絵里を見て、何か言いかけたが、最後は溜息に変わった。
佐藤絵里は冷ややかに継母の神がかり的な演技を見ていた。
「絵里ちゃん」佐藤父はついに口を開いた。「一度…会ってみないか?合わなければ断ればいい。鈴木おばさんの気持ちを無駄にしないでくれ」
「そうそう」と鈴木瑛子が言った。「明日の午前中に時間を決めたわ。少し身なりを整えて、時間通りに行ってね!」
佐藤絵里は黙ったままだった。
彼女は坂田和也と結婚したのに、どうしてお見合いなんて行くのか?
でも彼はまったく何も漏らしていない。彼女から積極的に言い出したら、彼の反感を買うのではないか?
坂田奥様の名前で威張り散らすのも、佐藤絵里のスタイルではなかった。
彼女がなかなか返事をしないのを見て、鈴木瑛子はさらに泣き言を続けた。「絵里ちゃん、あなたがどこにも行かないなら、私はこれからどう生きていけばいいの?」
「わかったわ」佐藤絵里は彼女のうるささに頭を痛めた。「行くわ」
その時になったら会って、すぐにめちゃくちゃにして終わらせればいい。そうすれば鈴木瑛子も彼女を非難できないだろう。
ただ、佐藤絵里が約束通り現れ、相手を見たとき、鈴木瑛子の悪意を過小評価していたことに気づいた。
この太り気味でハゲかけた中年男性は…年齢が彼女より三十歳も上だった。
そういうわけで、こんないい話なら鈴木瑛子が佐藤愛子に与えず、彼女に得をさせるはずがないと思っていた。
実際は、彼女を犠牲にしようとしていたのだ!
遠くで、西村海は電話を切り、急いで個室に向かった。入る前に大広間を何気なく見ると、「あれ?」と声を上げた。
坂田和也はくつろいだ様子で尋ねた。「どうした?」
「坂田社長、奥さんを見かけたような気がします」