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第5章 初めてのセックス

高橋裕也に対する好感は、一瞬で消え去った。

彼女は本来、自ら服を返しに行って、お礼を言うつもりだった。

今はもう、その気持ちはない。

彼が安藤花子の彼氏なら、もう会う必要もないだろう。

「これ、彼の服です。返してあげてください」

安藤美咲は冷たい声で言い終えると、踵を返した。

しかし、窓際のテーブルに戻ると、絵里の姿が見当たらない!

安藤美咲はすぐに店員に尋ねた。「すみません、さっき一緒に入ってきた女の子はどこに行きましたか?」

店員はその女の子を覚えていた。大きな目を持つ、まるで人形のような子で、一目見て記憶に残っていた。

「お客様、ご心配なく。お手洗いに行かれただけですよ」

安藤美咲はその言葉を聞いて安心した。

食事前に手を洗う——それは彼女が教えたことだ。小さな絵里がちゃんと覚えていてくれて、良かった。

……

トイレの入口、洗面台は共用だった。

絵里は手洗い石鹸をつけて手を洗いながら、小さな歌を歌っていた。

「夜にいい香りつけると、もっときれいになる!夜にいい香りつけると、もっときれいになる!」

そのとき、男子トイレから出てきた背の高い人影が彼女の隣に立ち、同じく手を洗い始めた。

絵里は鏡越しに彼を一瞥すると、突然目を見開いた。

このおじさん、空港で会ったあの人じゃない?お兄ちゃんたちにそっくり!すごくかっこいい!彼女の大きな瞳が斜視気味になった。

「イケメンおじさん、子供いるの?」実は「あなたが私のパパ?」と聞きたかったけど、勇気が出なかった。間違えたら叱られるかもしれないから。

彼らにはパパがいない。もし彼に子供がいて、そばにいないなら、もしかしたら彼らが彼の子供かもしれない!

その甘くて柔らかい小さな声を聞いて、高橋裕也は彼女の方を見た。小さな可愛い子だ。心の奥底で何かが柔らかくなる感覚があった。

「いないよ」

いつもの冷たさはない声だったが、表情は相変わらず無表情だった。

絵里はため息をついた。「私もパパいないんだ」

絵里のその小さな様子を見て、高橋裕也は少しだけ唇の端を上げた。

彼は子供をあやすのが得意ではないので、どう慰めればいいのか分からなかった。

絵里は突然思いついた。このイケメンおじさんをママに紹介しよう。こんなにかっこいいなら、ママはきっと気に入るはず!

彼女は手を拭くペーパーを引っ張りながら、くすくす笑った。自分がとても賢いと思って。

「イケメンおじさん、お友達になれる?電話番号ちょうだい。今度ごはんご馳走するね」

この言葉はテレビで覚えたもの。デートというのはご飯を食べに行くこと。

テレビでは男性が女性をご馳走するけど、ママには彼女たち三人という重荷があるから、彼女がおごればいい!

高橋裕也は帰ろうとしていたが、彼女の言葉を聞いて、細長い瞳を少し細め、妖艶な顔に薄い笑みを浮かべた。

この子は面白い子だ。もう人をご馳走することも知っているなんて。

何かに導かれるように、彼は金箔押しの名刺を取り出して彼女に渡した。「これが僕の番号だよ」

なぜか、この子を見たとき、どこか懐かしさを感じた。不思議と彼女に惹かれてしまった。

「ありがとう、イケメンおじさん」

絵里は名刺を受け取り、大事そうに斜めがけの小さなバッグにしまった。

高橋裕也が個室に戻ると、安藤花子はすぐに立ち上がった。

入ってきた男性を見て、彼女は目を見開いた。

なんてこと、こんなにかっこいい男性を初めて見た!

「高橋社長、はじめまして!」

高橋裕也は目の前の女の子を見て、唯一の印象は尖った顎が少し怖いということだけだった。彼女に対しても特に感情はなかった。彼女が六年前のあの女性なのだろうか?

安藤花子は少し緊張した様子だった。これはA市第一の名家の当主だ。もし彼と結婚できれば、A市で胸を張って歩けるようになるのに!

この呪われた美貌のせいで、こんな素晴らしい男性を引き寄せてしまった。心の中で喜びが湧き上がった。

「安藤さん、お聞きしたいのですが、何か変わった経験はありませんか?例えば、夢の中での出来事とか?」

安藤花子はよく理解できなかったが、こんなにかっこいい男性が高橋家の当主なら、チャンスを逃すわけにはいかない。

「ありますよ。小さい頃、夢で歯が抜けて、翌日本当に歯が抜けたんです。不思議じゃないですか?」

安藤花子の言葉を聞いて、高橋裕也は表情を変えずにもう一度尋ねた。

「初めて男性と関係を持ったのは何年ですか?意識がはっきりしていましたか、それとも朦朧としていましたか?男性から指輪をもらったことはありますか?」

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