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第55章 制御不能の佐々木海子

佐々木海子の漆黒の瞳に一瞬、驚愕の色が走った。

そんなはずがない。

あの時、去る前には佐々木剛の体調はほとんど回復していたはず。治療など必要なかったはずなのに。

「そう、あんたのお父さんは今も病院で手術を待ってるのよ。心臓の血管がまた詰まって、ステントを入れなきゃならないの。私たち二人じゃもうお金が出せないわ。あんたは…」

「もしもし、110番ですか？路上強盗の現行犯です」佐々木海子は冷静に携帯を取り出し、警察に通報した。

次の瞬間、その携帯は山下若菜に奪い取られた。「最新機種じゃない。この携帯だけでも20万円はするでしょ。見なさい、あんたがどれだけいい暮らししてるか。ほんの少しで...