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第38章 小崎笙が好きになった

腕の中が急に空っぽになり、気づいた時には、彼女の姿はもうなかった。

小崎颂の心に怒りの炎が一気に燃え上がった。彼は一つ唾を吐き、外に背を向けたまま、冷たく言い放った。「彼女を逃がすな」

案の定、佐々木海子は数歩も走らないうちに、二人の黒服の男に左右から捕まえられた。どれだけもがいても、所詮は無駄な抵抗だった。

彼女は小崎颂の前に引き立てられた。

背中はほとんど折れんばかりに押し曲げられていた。

一方、彼はゆっくりとソファに座り、万物を見下ろすような態度でいた。

この瞬間、佐々木海子はかつてない怒りに震えた。

そう、二人の関係は最初から不平等だった。

彼は全てを見下ろす王様で、...