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第19章 彼女は掌握から逃れられない

小崎颂は車の中で長い間座っていた。

窓は半開きで、彼は黙って目の前のマンションの玄関を眺めていた。この門だけ見ても、小崎家の豪邸とは雲泥の差だった。

佐々木海子はかつて小崎家の人間だったのに、こんな格下の貧民街に目をつけるなんて、本当に見識が浅はかだ。

彼の頭の中では、なぜか先ほど起きたことがすべて蘇ってきた。

佐々木海子は明らかに変わっていた。

兎も追い詰められれば噛みつく。彼女は今まさにその状態で、噛みつく寸前だった。

小崎颂は本来なら気分がよかったはずだ。結局彼女は自分の愚かな行動の代償を払っているのだから。

だが何故か、彼の心にはそんな感情はなく、むしろ何とも言えない苦...