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第17章

藤原信也の身に纏う空気が急に冷たくなった。

彼は濡れたままの財布を拾い上げ、唇の端に冷笑を浮かべた。

これが初めてだった。誰かに金を投げつけられたのは。

この女、本当に恩知らずだな。

昨日の一面識がなければ、どうして自分の服を脱いで彼女に掛けてやるなどということがあり得ただろうか。

藤原信也は冷笑した。

顔を上げると、岸辺では仲間たちが葉村尚子を取り囲んでいた。

彼の眉はさらに冷たく吊り上がり、足早に後を追った。

葉村尚子は八人の男たちに囲まれていたが、その表情には少しの狼狽や困惑の色もなかった。

彼女の視線はゆっくりとその場にいる全員を見渡した。

杉本家の次男、杉本健司...