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第187章

川崎司光が魅色クラブから出てきたとき、ちょうど藤原雲楽が薄着で道端に立ちタクシーを拾おうとしているのを目にした。彼が声をかけようとした矢先、彼女は先にタクシーに乗り込んでしまった。

車が彼の前を通り過ぎたところで、助手の幸平澤矢が小声で言った。

「あのタクシーの運転手、なんか変じゃないですか」

川崎司光は眉を上げた。

「どこが?」

「こんな夜中にマスクに帽子にサングラスって、顔を完全に隠してますよ。まるで犯罪者みたいです」

「犯罪者」という言葉が川崎司光の胸に突き刺さった。彼は表情を引き締め、すぐに車のドアを開けて座ると、幸平澤矢に言った。

「追いかけろ。見つからないように」

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