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第021章

結局、電話の向こうからは誰も話さなかった。

水原一郎は電波の調子が悪いのかと思い、携帯を耳から離して画面を確認したが、通話状態は正常だった。

彼はもう一度携帯を耳に当て、「もしもし」と声をかけたが、相変わらず相手は無言だった。

彼が知らないのは、石川健太が今話せない状況にいることだった。

石川健太兄妹と石川秀樹はみな車の中に座っており、斎藤恭介が前で運転していた。

車内の雰囲気は静かで、石川家の常とも言える空気が流れていた。

しかし石川健太もずっと黙ったままというわけにはいかない。さもなければ向こうの水原一郎はいたずら電話だと思ってしまうだろう。

少し考えてから、彼は石川秀樹の...