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第16章

篠原心海はべつに薄田蒼ってくずのことを気にかけているわけではなかったが、今日の出来事を思い出すと少し憂鬱になった。どんなに計算していても、薄田理子が今日事故に遭うとは予想できなかった。彼女はため息をついて、「離婚できなかった」と言った。

津本織江は目を丸くした。「えっ?昨日は離婚の約束をしたんじゃなかったの?どうして急にできなかったの?まさか、薄田蒼が後悔したとか?」

篠原心海は首を振り、車のドアを開けて座った。「違うわ。話すと複雑なの。とりあえず行きましょう。道中で説明するわ」

会所に着くまでに、篠原心海は今日起きたことをすべて話した。薄田蒼の首筋にあった赤い痕の話を聞いた時、津本織...