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第13章

若野唯は薄田蒼の袖をそっと引っ張った。「蒼、怒らないで。全部私のせいだから…」

篠原心海は唇の端に嘲笑うような弧を浮かべた。まさかここで自分の夫に出くわすとは思わなかった。ただ残念なことに、彼は他人のために味方をしに来たのだ。

「たった一発平手打ちしただけで、そんなに心配で耐えられないの?わたしを殺したいとでも?」

若野唯は無理に笑みを浮かべた。「すみません篠原さん、怒らせるつもりはなかったんです。さっきは言葉を間違えました、本当にごめんなさい」

薄田蒼は若野唯を後ろに庇い、鋭い眼差しで、冷たい声で言った。「謝れ」

後ろ盾を得た若野唯は薄田蒼にぴったりと寄り添い、両手で男の腕をしっ...