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第11章

篠原心海は急に目を開いた。薄田蒼はいつの間にか目を閉じており、長い睫毛が震えていた。薄暗い灯りが彼の鋭さを和らげ、頼りがいのある男に見せていた。

篠原心海は再び目を閉じ、強く薄田蒼の唇に噛みついた。

情欲に駆られていた薄田蒼は痛みにシッと息を吸い、すぐに身を引いた。唇には血の滴が残っている。「どうした?あの男のために貞操を守っているのか?」

篠原心海は彼の悪意ある言葉を無視し、深呼吸して動揺した感情を落ち着かせた。「欲求があるなら若野唯に行きなさい」

薄田蒼は手を伸ばして唇の血を拭い、冷たい眼差しで言った。「俺たちはまだ離婚してない。余計なことが起きるのは避けたいんだ」

薄田蒼がキ...