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第70章 彼はなだめる、ナナ、泣かないで

桜島ナナは彼にどう返事すればいいのか分からなかった。彼の前では、よく頭が真っ白になってしまう。

しかし、素早く自分の手を引き抜くべきことだけは覚えている。

藤原夜は彼女のそんな頑なな様子を見て、思い切って腕を伸ばし彼女を抱き寄せると、低い声で問いただした。「何を拗ねているんだ?」

「拗ねてなんかいないわ。ただ、私たちは……」

彼女の言葉が終わる前に、突然唇を塞がれた。

彼女の頭の中で「ぶん」という音がして、何も考えられなくなった。

前で運転している田中さんは、彼らのやり取りを見ていた。

社長は奥さんをとても大事にしているようだな。

いいことだ、おばあさんに早く報告しなければ。...