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第69章 夏の暑さも、恋に燃える男女の熱さには敵わない

「桜島秘書、あなたたちの家は近いのね?」

青木絵里はまだ話し続けていた。

桜島ナナはそれを聞いても手を止めなかったが、思わず可笑しく感じた。

彼らは近いどころではない。

上下の階に住んでいて、一分もかからずに相手の家に着ける距離だ。

桜島ナナは今日、藤原夜と佐藤遥が喧嘩したことを確認したが、自分の感情を何度も抑え込んでいた。

彼女は自分に大丈夫だと言い聞かせた。すべては過ぎ去るものだと。

今は確かに秘書だけれど、きっとすぐにそうではなくなるはずだ。

今夜、彼女は藤原家の実家に戻るつもりだった。

三十分後、藤原夜が戻ってきたが、身につけていたスーツの上着は消...