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第55章 彼は自分が夫としての義務を果たしていないことを知っている

藤原夜の熱い手が彼女の手首を掴んでいた。

薬を落としてしまうのが怖かったのと、彼の次の行動を予想できなかったからこそ、彼女は抵抗しなかった。

彼が、頭を下げた。

掌の中が突然熱くなり、彼女は反射的にすぐさま身を引いた。

だが藤原夜はすでにゆっくりと水を飲み、薬を飲み込んでいた。

顔を赤らめる彼女を見て、彼は浅く微笑んだ。「僕たちは夫婦だよ、そんなに慌てることないじゃないか?」

「……」

桜島ナナは疑わしげに彼を見つめた。

夫婦?

彼女は何も言えず、ただぎこちなく困惑した様子で手を背中に回し、両手をもじもじさせながら、彼にキスされた掌をこすり続けた。

死にそうだった。

他...