




第5章 下着を取る
「それに、夫婦の仲睦まじさを証明する方法はいろいろあるのに、彼がこんな艶めかしい方法を選んだのよね」
桜島ナナは心の中で文句を言い続けながらも、表情は変えずに「私にはできません、藤原様。ご安心ください」と言った。
藤原夜は桜島ナナのそんな言葉を聞いて、なぜか急に苛立ちを覚えた。たぶん今夜のパーティーがあまりにも煩わしかったからだろう。
そう考えながら、彼はバスルームへと歩いていった。
一方、桜島ナナはベッドカバーで顔を覆い、しばらくして落ち着きを取り戻した。
彼女は今や藤原夜と離婚している身。あんなことはもう絶対に考えてはいけない。それは不道徳な行為で、人に蔑まれることだ。いや違う、本当は彼女こそが彼の正式な妻なのに...
でも、彼女が藤原夜の妻だということを知っている人がいるだろうか?誰一人として知らない。
離婚した後、藤原夜は堂々と佐藤遥を娶り、彼女という汚点を完全に忘れることができる。
そう思いながら、桜島ナナは荷物をまとめ始めた。明日出ていくつもりなら、今日のうちに準備しておかなければ。
クローゼットを開けると、たくさんの服が詰まっていたが、着たことがあるのはほんの数着だけ。桜島ナナはこの数年、藤原家で細心の注意を払って生活し、藤原夜のお母さんが買ってくれた服さえ着る勇気がなかった。
服を片付けていると、バスルームから突然声が聞こえた。
「パジャマを一組持ってきてくれ」
桜島ナナはその言葉に固まった。彼女に言っているの?
この部屋には確かに他に誰もいない。そこで桜島ナナは再びクローゼットを開けた。この部屋はもともと二人のために用意されたもので、藤原夜が長期間戻ってこなくても、家では彼が突然帰ってきた時のために服が用意されていた。
桜島ナナは適当に一組を取り出し、振り返ると、藤原夜はすでにバスタオルを巻いてバスルームの入り口に立っていた。いつもと違って、今の藤原夜は髪が濡れてしたたり落ち、素直に下ろされていて、普段よりも少し可愛らしさが増していた。
髪型だけでなく、風呂上がりということもあり、藤原夜は今、服を着ていない。非常に整った体つきがそのまま桜島ナナの目の前に晒されていた。
桜島ナナは認めざるを得なかった。藤原夜の体は本当に素晴らしい。腹筋、胸筋、鼠径部のライン、すべてが完璧だった。もしバスタオルを取ったら...
そこまで考えて桜島ナナはすぐに自分の思考を止めた。彼らはもう離婚したのだ。どうしてこんな下劣なことを考えられるのだろう!
「見飽きた?そろそろパジャマをくれないか?」
「あ、はい、どうぞ。クローゼットで適当に取ったから、素材が好みかどうか分からないけど」
藤原夜はパジャマを受け取り、「とても気に入った。次回もこのようなパジャマを用意してくれればいい」と言った。
次回?桜島ナナの頭が回らなくなった。彼らはもう離婚したはずなのに、どうして次回があるのだろう?
顔を上げると、藤原夜はまだ手を差し出したままだった。桜島ナナの頭はますます混乱した。「え?」
「何も着ずに直接パジャマを着ろというのか?」
つまり藤原夜は今、下着も持ってきてほしいということなのか?
「これも、私が用意するの?」
藤原夜は呆れたように笑った。「じゃあどうする?俺がバスタオル巻いたまま自分で下着を取って、それからまたここに立ってパジャマをもらうとでも?」
桜島ナナは急に自分がとても愚かだと感じた。どうしてそんなことに気づかなかったのだろう...
彼女は下着が入っている引き出しを開けた。普段は藤原夜の箱を開けたことがなく、今日が初めてだった。手当たり次第に黒いものを一つ取り、藤原夜に渡した。
藤原夜は真っ赤になった桜島ナナの顔を見て、突然ありえない考えが浮かんだ。「桜島ナナ、もしかして一度も彼氏がいたことないのか?」