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第37章 パスワード

桜島ナナは軽やかに階段を降りてきた。朝日がカーテン越しに差し込み、温かい木の床に光の筋を描いていた。彼女は柔らかなセーターと履き心地の良い長ズボンを身につけ、新しい一日を迎える準備をしていた。階下では、すでに家政婦が忙しく立ち働き、キッチンからは食欲をそそる香りが漂ってきていた。目玉焼きとトーストの香りが空気中に広がり、思わず唾を飲み込みたくなるほどだった。

家政婦がフライ返しを手に持ったまま、キッチンから出てきて、少し驚いた表情を浮かべていた。桜島ナナは家政婦に微笑みかけて言った。「私が出ますね」

ちょうどその時、藤原夜もゆっくりと階段を降りてきた。彼の足取りは落ち着いており、力強さを...