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第32章 コンサート

桜島ナナは突然、藤原舟との約束を思い出し、すぐに彼に電話をかけた。

電話の向こうからは藤原舟の焦りを帯びた声が聞こえてきた。「今どこにいるの?迎えに行こうか?また藤原夜に何かされたの?」

「大丈夫よ、藤原おばあちゃんに会っていたの。今すぐそっちに行くわ」

藤原夜は彼女を見つめ、少し苛立ちを含んだ声で言った。明らかに彼女の躊躇いが理解できないという様子だった。「車まで抱っこしてほしいのか?」

「他に用事があるので、先にお帰りください」

桜島ナナはそう言って後ずさりした。今夜のコンサートが自分にとってどれほど大切なものか分かっていた。友達を失望させたくなかった。

「もう暗くなっている...