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第195章 彼女の耳元で無念のため息が聞こえる

しかし彼が唇を重ねた瞬間、彼女の頬は熱を帯び始め、耳たぶまでもうっすらとピンク色に染まっていった。

彼はいつも、キスしたいと思えばそのまま行動に移し、彼女の意志など微塵も気にかけない。

もちろん、彼女は嫌ではなかった。

もし彼が単なる彼女の夫であったなら。

桜島ナナは手を伸ばし、彼の肩に押し当てると、顔を背けた。「やめて」

藤原夜はそれ以上強引には出ず、ただ彼女の拒絶する姿を見つめながら、諦めたように息を吐いた。

彼は自制できないわけではなかった。

だが、そもそも彼は何のために自制する必要があるのだろう?

彼女はこうも彼のことを理解せず、信頼せず、ただ「やめて」としか言わない...