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第140章 彼はありがとうと言った

彼は冷たい視線で彼女を一瞥すると、そのまま背を向けて遠ざかっていった。

桜島ナナは何も言わなかったが、体は緊張で強張っていた。

エレベーターの方へ向かう時、彼女は少し躊躇いがちだった。

田中社長が出てきた時、藤原夜もエレベーターを待っているのが見えた。桜島ナナの後ろ姿には落胆と困惑が満ちながらも、彼の方へ歩いていた。

桜島ナナは帰りたくなかった。

それでも結局は彼の車に乗り込んだ。

車に乗る時、桜島ナナは無意識に前の席に座ろうとしたが、藤原夜に掴まれて後部座席に押し込められた。

少し酒を飲んだから、運転できない。

だから彼が後ろに座り、彼女は飲んでいなくても一緒に座らされた。...