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第130章 妻はただの肩書

「誰も私たちを知らない場所へ行って、新しい生活を始めよう」

桜島ナナは自分の手が握られていることを感じ、思わずその方向を見た。

二人の手の温度は異なっていた。藤原夜のほうが、より温かかった。

桜島ナナは無意識に手を引こうとしたが、藤原舟は今回は離さず、彼女に告げた。「手を握らせて。もう自分を傷つけないで」

彼は彼女の癖を知っていた。彼女が辛くて耐えられないとき、爪で自分の指の内側を強く押すことがあった。

彼女は肌が繊細だから、考えるまでもなく痛いはずだ。

桜島ナナはようやく彼を見つめた。「私はまだ藤原夜の妻よ。あなたと何処へ駆け落ちできるというの?」

「妻なんて名ばかりだ。俺は...