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第22章

佐藤橋は両目を閉じた。

「前線から離れてもう2年以上経つ。当時の感覚を取り戻せるかどうか、自信がないな」と松本祐介は、ネクタイのウィンザーノットを片手でゆっくりと引き下ろしながら言った。「でも大丈夫だろう。お互いに磨き合った経験があるから」

彼は「磨き合った」という言葉に微かにアクセントを置き、その2つの言葉を慎重に口の中で転がすように発音した。その影響で、佐藤橋も自分が彼によって噛み砕かれたような感覚を覚えた。そう、まるで裸で、何も身につけていないような感じだ。

「松本監督…人を変えるのは大仕事だ。急ぐ必要はないよ。少し待ってもいいし、そのうち中村さんが戻ってくるかもしれない」と佐藤...