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第54章

馬車がテリアンをヴェルリット荘園に運んだとき、アネルはすでに先に戻っており、書斎で対策を考えていた。

門の外と荘園の正門にはそれぞれ護衛の騎士が一人立っており、他の二人は交代で休めるよう別の部屋に案内されていた。

テリアンは馬車から降り、荘園の豪華で壮麗な姿を目にして、瞳に一瞬だけ見過ごしてしまいそうな羨望の色が浮かんだ。振り返ると、守衛たちの中に銀色の甲冑に身を包んだ高貴で冷たい印象の騎士が立っているのが見えた。彼女は一瞬たじろぎながらも、守衛に近づいて声をかけた。

「あの、アネル...いえ、ヴェルリット公爵様にお会いしたいのですが、取り次いでいただけませんか?」

守衛は少し躊躇い...