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第51章

アネルが入室すると、ロフは一瞬我を忘れた。彼女の黒い喪服を見て、ようやくアネル・ヴェルリットが両親と兄弟を失い、今やヴェルリット家に彼女一人しか残っていないことを思い出した。

「アネル・ヴェルリット、王様にお目通り申し上げます」

ロフはアネルが毅然として立っている姿を見て、声色を和らげた。

「太后に会いに来たのか?太后は最近ずっとお前のことを気にかけていたが、領地に戻ったばかりで忙しいだろうと思い、わざわざ呼び出すのは控えていたのだ」

アネルは唇を軽く噛んだ。太后と母は親友であり、彼女自身も太后に見守られて成長してきた。もっと重要な案件を早急に処理する必要がなければ、アネルも太后に会...