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第29章 壁を掘る

斎藤直人は彼の手からグラスを奪い取った。塚本悟は何も言わず、ただ自分にもう一杯酒を注いだ。彼は憂鬱だったが、その気持ちを発散する方法が見つからなかった。

「そんな女のために気を落とすなんて、価値ないぞ」と斎藤直人は言った。

「どこの目で俺がその女のために気分が悪いと見たんだ?」と塚本悟は返した。

「見なくてもわかるさ。『機嫌が悪い』って大きな文字が顔に書いてあるようなものだろ」

斎藤直人は男が浮気されたのは確かに面目丸つぶれだと理解していた。それについて話し続けるのもよくないと思い、話題を変えた。「お前は今回東部に一ヶ月以上滞在して、その美人アシスタントもずっとそこで付き添ってたじゃ...