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第36章

理性は水原念に告げていた。鈴木直哉はそんな約束を破るような人間ではないと。

だが、現実は目の前に突きつけられていた。八時になっても、鈴木直哉は来ない。彼女の心に不安が忍び寄る。

携帯電話を取り出し、しばらく画面を眺めた後、水原念は鈴木直哉の番号をダイヤルした。

誰も出ない。

水原念は携帯を握る手に力が入った。鈴木直哉は本当に気が変わったのか、離婚する気がなくなったのか?もし本当に彼が翻意したのなら、夏目清子にどう説明するつもりだろう?夏目清子が傷つくことを心配しないのだろうか?

ピンポーン——

携帯の着信音が鳴った。

水原念は鈴木直哉からの折り返しだと思い、すぐに出た。「鈴木様...