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第16章

夜の色が深く、細かい雨が降っていたから、それとも鈴木直哉が笑いながら話していたからなのか、彼の声は無限の優しさと甘やかしを帯びて聞こえた。

「妻と夫が少し言い争っても、夫は妻にどうすることもできない、可愛がるしかない」というその言葉自体が、無限の優しさと甘やかしを含んでいた。

二つの優しさと甘やかしが重なり、水原念の心は激しく震え、思わず目を鈴木直哉の方へ向けた。

彼は今まで一度も他人の前で彼女を妻だと認めたことがなかった。

そして一度もこんな優しく「可愛がる」などと言ったことがなかった。

それまで、水原念は「鈴木直哉」と「水原念」という二つの名前の間に「可愛がる」という言葉が入る...