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第9章 弟を連れて行く

塚本家の別荘は郊外に、塚本グループは都心にあり、最短で会社に到着するには車列は下町を通過しなければならなかった。

アシスタントは下町の通りを走っている時、見覚えのある姿を目にした。

「社長、藤原さんのようですが」と塚本恭平に小声で報告した。

塚本恭平が振り向くと、確かに藤原真央が路傍に立っているのが見えた。

彼女は弟を車椅子で押しながら、大小の荷物を抱えて立っていた。

この道は塚本恭平が毎朝会社へ向かう際の通勤路だった。

この女が故意にここで待ち伏せているとしか思えなかった。

昨夜、きっぱりと協力を断ったくせに、今日は同情を買おうというつもりか。

窓の外の藤原真央は、威圧感の...