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第37章 これが義を見て勇を為すという

藤原翔太は先ほど地面に投げ飛ばされたものの、車椅子に支えられたおかげで、それほど痛くはなかった。手首の擦り傷は、立ち上がろうとした時についたものだった。

「お姉ちゃん、大丈夫だよ。怪我してないから」

藤原翔太は不器用に姉を安心させようとした。

藤原真央は弟の頭を抱きしめ、黙り込んでいた。

警察官でありながら、自分の弟すら守れない。今日は翔太が無事でよかった。もし何かあったら、どう対処すればよかったのか分からない。

「太田陽介が何かしてきたら、私に言って……」

弟の傷の手当てを終えた藤原真央は、運転中の塚本恭平に向かって思わず口を開いた。

太田陽介の家は高級ホテルを経営できるほど...