彼の鉄のような腕が私の腰に回され、壁に押し付けられた。

「離して！」私は歯を食いしばって言った。

「今ここで」彼は耳たぶに唇を這わせながら近づいてきた。
「お前を無理やり抱いて、美しい声で悲鳴を上げさせることだってできる」彼は低い声で囁いた。

私は息を呑み、腰から彼の手を振り払おうともがいた。
「結局お前は俺の妻なんだろう？」彼はからかうように、歯で優しく私の肌を噛んだ。
私の中で奇妙な熱が湧き上がり、それを抑えようと必死だった。

「ダンテ、離して！」私は怒りを込めて言った。
ゆっくりと彼は首筋から顔を上げ、私と向き合った。
彼は指先で私の唇を撫で、悪魔のような笑みを浮かべた。

＊＊＊＊＊＊

愛。犯罪。情熱。強い女性主人公。

ロシアマフィアのドンの娘、活発で大胆不敵なアリーナ・フョードロフは、父親の意向で望まない結婚を強いられる。そして花婿は他でもない、最も強力で危険なイタリア系アメリカマフィアのカポ・デイ・カピ、恐れられし存在のダンテ・モレッリだった。

ヨーロッパとアメリカ全土に勢力を持ち、無数のカポや幹部を自在に操る彼は、冷酷無比に裏社会を支配している。命令に背く者は容赦なく始末し、危険な犯罪の人生を送るための訓練を重ねてきた。

しかし、衝動的で自立心の強いアリーナ・フョードロフと出会った時、それらは全て意味を持たなくなる。

父親の罪に対する復讐を望むダンテと、果たして愛は芽生えるのか？それともアリーナは彼の冷たい心の壁を壊し、彼を膝まづかせることができるのか？


彼のマフィアの花嫁

ダンテ
ニコリアの家までの道のりは一世紀にも感じられた。不安と怒りが煮えたぎり、胸が締め付けられ、アリーナ以外の何にも集中できなかった。
配下たちは無駄な口論を繰り返し、延々と計画を立てていたが、私には何も聞こえなかった。
聞こえるのは自分の心臓の重い鼓動だけで、それが耳の中で響き渡り、他のすべての音を遮断していた。
ニコリアは私に24時間だけ与えて会いに来いと言った。そしてその血まみれの野郎と対峙する準備はできている。
私を脅すのは一つだが、アリーナを誘拐して彼女をサンドバッグにするなど、私には耐えられない。
決して許さない。
アリーナに背を向けた自分が大馬鹿で間抜けだと既に感じてい...

70話