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68話

マルコムの声は冷たく遠く、彼の濃い眉は弓なりに、深くて魅力的な目は危険の気配を漂わせていた。

「妻を誘拐したことについてまだ決着もついていないのに、今度は助けを求めるのか?」

アリッサは唖然とした。先ほど見たやさしいマルコムと、目の前の威圧的な人物が同一人物だとは思えなかった。

リースの前では子羊のように優しく、声のトーンにも気を配っていたのに、アリッサに対しては無関心に見えた。彼らはまだ家族なのだろうか?

マルコムが去った後も、アリッサはショックを受けたまま、頭が混乱していた。彼女は二人を助けようとしただけなのに、なぜ何もうまくできないような気持ちになるのだろう?

彼女はイライラし...