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198話

その瞬間に捕らえられたリースは、言葉を見つけることができなかった。彼女の固く閉ざした心は、この男の前でゆっくりと溶けていくようだった。

彼女の恐れは状況をコントロールできなくなることだったが、時に心は常に命令できるものではない。

「マルコム、私は本当に…」

「さあ、今は甘い話をする時間じゃない。服を着替えて顔を洗いなさい。そうしないと、戻ったときに説明が必要になるよ」

マルコムはトランクからバッグを取り出し、リースに手渡した。彼女が中を覗くと、着替え、靴、そしてメイク落としまで入っているのが見えた。彼女の目の端がピクリと動いた。

この男は何もかも考えていた。それはさらに、彼がこの外出...