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第1267話あなたを見るだけで私はとても幸せになります

彼女はスーツケースを開け、繊細なリボンのついた黒いベルベットの箱を取り出した。

それをエイドリアンに手渡す。「友人からの贈り物なの。彼の家は宝飾関係の仕事をしていて、最近原石のロットを手に入れたらしくて。それでクリスタルのカフスボタンを一組作ってもらったの」

エイドリアンはそれを受け取って箱を開けると、中には一対の黒いクリスタルのカフスボタンが見えた。

ナタリーはわずかに伏し目がちになり、その睫毛が震えていた。

声は柔らかくハスキーで、微かな震えと、それでいて決意が滲んでいた。

「エイドリアン、あなたがサンクレスト・シティに来てくれて、本当に嬉しいわ。仕事のためでも、他の理由でも、あ...