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第1213話桜の木

このナタリーは、物腰は柔らかいが、チェスのこととなるとかなり決断力があった。

二局目が始まった。

ジョーが先手を取り、すぐには攻め込まず、一歩一歩探りを入れるように駒を進めた。

ナタリーはジョーの動きに合わせるかのように、やや受け身だった。突破できる機会が何度かあったが、ナタリーはそれを見送った。

チェスをしている間、周りには物音一つなく、会話もなかった。

他の者たちは息をのみ、熱心にゲームを見守っていた。

エイドリアンはナタリーのそばに立ち、彼女の指し手を観察していた。

ゲームの半ば、彼はナタリーの真剣で繊細な横顔を一瞥し、彼女の意図を理解したようだった。

彼女は最初の一手か...