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189話

クエンティンは立ち止まり、マシューが本当に記憶喪失に苦しんでいるという事実と向き合っていた。

彼女はマシューがベッドに楽に横になれるよう立ち上がるのを手伝おうとしたが、彼はあまりに素早く立ち上がったため、めまいを感じた。彼の体重がクエンティンにかかり、二人とも足元がふらつき、一緒にベッドに倒れ込んでしまった。

二人の目が合い、息は短く途切れ、心臓は胸の中で不規則に鼓動していた。マシューはベッドに横たわり、クエンティンはマットレスに手をついて彼の上に身を乗り出していた。互いの瞳の中に、相手を引き込む深い淵を見ているかのようだった。二人が近づくにつれ、部屋の中の空気は言葉にできない引力でパチパ...