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22話

ピッパ

やっぱり予想通り、地下鉄は立ち席しかない状態だ。

その結果、狭い車内には体温98.6度の人間が多すぎる。金属の手すりに寄りかかりながら、本のページを広げて仰いで、必死に鼻に入ってくる異臭をやわらげようとする。

次の駅で、さらに多くの人が乗り込んでくる。押し合いへし合いされ、咳をかけられ、不自然な姿勢に押しつぶされる。車内から叫びながら逃げ出したいけど、ドアが閉まる。良くも悪くも、私たちは出発した。

左右に目を動かし、白い紙の上の黒い文字を読むが、何の意味も持たない。家までの道のりの半分で、私はすべての見せかけを諦め、落胆をあらわにする。

ミスター—いや、ザビエル—が...