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第90話消えたセシリーさん

細く長い手がセシリーに小さなティッシュパックを差し出した。野球帽をかぶったドライバーは黙ったまま、ただティッシュを手渡すだけだった。

セシリーはそれを受け取り、小さな声で「ありがとう」と言った。

彼女は人前で弱い部分を見せることはめったになく、素早く涙を拭った。

車はスムーズに停車し、セシリーは降りた。男は彼女が建物に入るのを見届けてから、帽子を取った。そこに現れたのは、ブレイズの際立つ比類なき容姿だった。その瞬間、彼の表情は無表情だったが、その暗い瞳には不気味な強さが漂っていた。

家に戻ると、グリフィンはダリアンの家にいたため、メアリーだけがいた。

メアリーはセシリーの顔色の悪さに...