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第795話まだ尊厳が欲しいの?

ジャスパーはアデラインと共に、一晩中降りしきる雨の中を歩き続けた。

幸い、春から夏へと移り変わる季節だったので、気温はそれほど低くはなかった。

やがて陽が昇った。

アデラインが言った通り、空には虹がかかった。

ジャスパーは傘を閉じ、アデラインの腕に抱かれた命のない赤ん坊に目をやり、そっと彼女の目から涙を拭った。

「アデライン、一晩中抱いていたね。もうこの子を休ませてあげる時間だ」

彼の言葉に、アデラインの涙が再び溢れ出した。

彼女は鼻をすすり上げ、顔を上げると、目の前には大きな桜の木があった。

それは偶然だったのだろうか。

彼女が初めてジャスパーに出会ったのも、桜の木の下だっ...