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第607話

アデリンは冷静さを保とうとした。「レックス、現実的に考えましょう。私たちのいわゆる婚約は昨夜の成り行きで起きただけよ。お互いが本当に望んでいることじゃないわ。あなたと結婚するつもりはないし、結婚式の日取りなんて話し合いたくもないわ」

「そうかな？」電話の向こうでレックスが笑った。「でもアデリン、僕らの婚約と、昨夜ステージで君が僕にキスしようとした写真が至る所に出回ってるよ。今日のラディアンス・スプリングスのニュースを見てごらん、分かるから」

レックスの笑いには不気味な響きがあった。「今すぐ会った方がいいと思うよ。さもないと、婚約者の君が婚約者の兄と同じヴィラに住んでいることを漏らすかもしれ...