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第396話泣いても笑わない

彼はまるで独り言を言っているようだった。あるいはマーガレットに話しかけていたのかもしれない。

あるいは両方かもしれない。

レイモンドはかつてヤマアラシのようだった。棘だらけで柔らかさのかけらもなく、愛のない心に誰も近づけないようにしていた。彼は憎しみに溺れていた。

彼は自分の人生には一つの目的しかないと信じ込んでいた。復讐だ。

幸せ?そんな言葉は彼の世界には存在しなかった。

しかし今、彼はその棘を一本一本脱ぎ捨て、傷だらけの心を彼女に見せたいと思っていた。

「レイモンド、あなたの子供時代はとても辛かったのね」

レイモンドの顔が一瞬凍りついた。端正な眉が寄る。辛い?それは控えめな表...