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第351話レイモンド、わざとやったのね

レイモンドの心はますます苦々しくなっていった。

彼女は本当に覚えていないのだ。

過去に囚われているのは自分だけ、記憶を持ち続けているのは自分だけ。

市役所までの道のりはわずか10分ほどだった。

誰も口を開かなかった。

沈黙が息苦しかった。

マーガレットは目を閉じ、眠りを装った。これから行う離婚手続きに影響するような更なる口論を避けるためだ。

レイモンドは彼女が演技していることを知っていた。彼女が意図的に自分を避けていることも。

だが彼はそれを指摘しないことにした。

もうすぐ終わるのだ。この脆い平和を壊したくはなかった。

車は市役所の前で停まった。

アルヴィンが最初に降り、...