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第823話いや、待ってるよ

「分かっていますわ。でも、ハリントンさん、私のことまでご心配いただくには及びません」

ヴィクトリアはそう言うと、その場を立ち去ろうとした。

しかし、アレクサンダーのそばまで来たところで、彼が身を乗り出し、長い腕を伸ばして彼女を掴み、自分の膝の上へと引き寄せた。両手で彼女の腕を掴み、真っ直ぐに見つめながら言った。「君とエイドリアンのことを言っているんだ」

ヴィクトリアは言葉もなく彼を見つめた。

（彼は自分とエイドリアンのことばかり気にして、自分の浮気については棚に上げるつもりなの？）

（それとも、ただ自分に甘いだけなのかしら？）

ヴィクトリアは内心でその身勝手さを可笑しいとさえ思ったが、表情...