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第781話彼らの心はすでに離れている

二人の唇が絡み合った瞬間、どちらの心臓が先に鼓動を速めたのかは定かではなかったが、ヴィクトリアは確かに心臓の鼓動を感じていた。

それが自分の鼓動なのか彼のものなのか判別できなかったが、不規則で力強いものだということだけは分かっていた。

やがて、彼女の呼吸も乱れ始めた。

キスをしているのに、まるで戦いをしているかのような感覚だった。

彼女は明確に考えることも、話すこともできなかった。

ただ必死に呼吸するための隙を作ろうとしていた。

すぐに、アレクサンダーの冷たい唇が彼女の首筋に落ちてきた。

ヴィクトリアは苦しげな喘ぎ声を漏らし、彼の腕をつかんでいた手から力が抜けたが、彼女が倒れる前...