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第698話臆病なオルテラン夫人

薄暗い部屋で、セバスチャンはモリーを真下に見るほど近くにいた。二人の視線が交わり、彼は彼女をさらにきつく抱きしめた。「言わなくても分かっていると思っていたんだ」

モリーは即座に返した。「私も、言わなくても分かっていると思ってたわ」

セバスチャンは言葉を失った。

彼がモリーにキスしようと身を乗り出すと、彼女は拗ねたように顔をそむけ、彼の唇は彼女の頬に触れるだけだった。

「モリー、お互いの気持ちを言い合おうか?」

モリーは少し身をよじらせ、悪戯っぽい光を瞳に宿してセバスチャンを見上げた。「あなたから先にどうぞ」

普段は抜け目のないセバスチャンも、この時ばかりはモリーの罠にまんまとはまっ...