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第800話

グラスを置いて、ゆっくりと立ち上がる。彼が氷の容器をいじりながら過剰なエネルギーを抑えようとしている、その背の高い逞しい背中に視線を送りながら、私は前に進む。これが正しい行動だと確信しながら、決意と自信が膨らんでいく。

彼との距離を縮めながら、彼を見つめる。彼のしたことを知った私が、二倍の速さでドアへ向かって逃げ出すという静かな絶望感が彼から伝わってくる。遠くからでも彼の緊張が感じられる。プログラムされた通りに行動することで、また一人の女性から愛される価値がないと判断され、避けられる恐怖に怯える少年のような彼。

誰がそんな残忍で冷酷に殺す人間を愛せるだろう?

私。

私ならできる。

なぜなら...