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第73話

頭の中でぐるぐると思い出すのをやめてくれれば、何も起こらなかったことにできるのに。まだ彼の唇の感触が残っている。彼の味、私の舌に絡みついてきた彼の舌、体中をぞくぞくさせ、熱くさせるあの感覚。振り払えない。

彼の強い体が私を閉じ込め、押しつけてくる感触…

やめて!

身震いしてソファのブランケットに手を伸ばし、体を包み込む。窓際に立ち、暗いシカゴの街を見下ろしながら気を紛らわせようとする。荒れた地域は月明かりの下でさらに荒廃して見える。ここから出られる時間を数えている。とにかく気を紛らわせるものだ。数分前の官能的な出来事に取り憑かれるよりはましだ。まだ全身の肌がうずいている。

「やあ」ジェ...