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第659話

わたしはなぜ彼にこんなことを話しているのかわからない。今まで人に正直になる必要性を感じたことなど一度もなかったのに。でも彼に嘘をつくことは、おそらく人生で最も愚かな行為になるだろうという予感がする。もしかしたら最後の行為になるかもしれない。彼は十キロ先からでも嘘を嗅ぎ分けられるような人物だから。

「俺が面倒を見る。朝にこの番号に電話して、詳細を伝えろ」彼は暗闇の中で何かを差し出し、私に手渡そうと身を乗り出したとき、カードの一部が見えた。私は慎重にそれを受け取る。手が酷く震え、彼に触れることを恐れている——悪魔が接触だけで魂を吸い取ることができるかもしれないから。そんな寒気を感じるのだ。

「...